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 この展覧会を訪れた人の目前には深い森のような世界が広がっています。そこにはプロのようなとか、本格的な、という形容詞は必要ありません。何かに没頭する時間と表現への熱い想い、それらが本という形を通して、はっきりと身近に感じられる展覧会、それが「世界に一冊だけの本・展」です。

 

 本とは何かを伝える為にあるものです。伝えるための内容がその中にはあります。どう伝えるかを考え費やした長い時間がまぎれもなくその中に詰まっています。子どもだからこそ生まれる、大人の想像を遥かに超えた、天然な破壊力を持つ展開。多感な時期に、周りが見えないくらいに没頭したからこそ深く自己に入り込み生まれたエニグマ。子育て中のお母さんが描き出す、母親だけが感じうるであろう子どもを通じての多幸感。何かが好き過ぎて、それを知らせたくてしょうがないという欲求から生まれた、驚きとともになにがしかのおかしみさえ感じさせる奇想天外な趣味の世界。人生のある一瞬を振り返った時に、決して自慢話に落ち入らずに、ペーソスや深みある余韻を与える輝き。そして絵本や小説、写真でも、プロを目指している者が、その初期の作品だからこそ爆発させる唯一無二の躍動感。アート作品まで含め、なんとも形容出来ない摩訶不思議なもの、あらゆるものがここには存在します。「世界に一冊だけの本・展」は、まさに表現の宝庫といえるでしょう。

 

 この展覧会を語る上でもうひとつ大切なことがあります。ブックデザインというものは内容を効率よく伝えるためにあり、基本的にはどれだけ書店で手に取り易くするか、つまり売れるためのものともいえます。しかしここにあるのは、商業主義とは無縁だからこその自由です。採算を考えず、自分自身の手でたった一冊だけを製本する。凝った装丁でも、たとえ稚拙なものであったとしても、その人独自の感覚や、楽しんで作っていることや愛情は、手作りであるからこそ伝わるのです。工夫を凝らしたものでも、たとえホチキス留めであったとしても、苦労して造り上げたものは、紛れもなく世界にひとつしか存在しえない本となります。実際に手を動す行為そのものこそが表現の基本であり、もっとも尊く、真の意味の創作となりうるのです。それこそが感動を生むための源泉とも言えるでしょう。自分のためだけの表現が、深いところで普遍へと繋がっています。

 

さぁ、あなたも “世界に一冊だけの本” を作ってみませんか?

オリジナリティ溢れる、あなただけの “表現” をお待ちしています。

 

そして、あなたも「世界に一冊だけの本・展」という名の森の中へそっと足を踏み入れてみませんか?

きっとそこは、あなたを惑わす森の不思議な住人たちで溢れていることでしょう。

世界に一冊だけの本・展 実行委員会 代表 小宮伸二(美術家)
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